新規顧客の獲得に比べて、リピート顧客の売上は5倍になる──。このフレーズをどこかで聞いたことがある方も多いと思います。
でも、「分かってはいるけど、現実にはなかなか…」というのが中小企業の本音ではないでしょうか?

顧客をファンに変え、何度も買ってもらう。
これができれば、売上は安定し、広告費は抑えられ、紹介も生まれる。まさに“理想的な成長モデル”ですが、そこには見落としがちな落とし穴があります。今日は、社長が意外と気づいていない“リピート顧客を増やすための本質的なポイント”をお伝えします。

なぜあの会社には“自然と”リピートが生まれるのか?

成功している会社を観察していると、ある共通点に気づきます。
それは、「顧客との関係づくりを、売上づくりよりも先に考えている」ということ。

たとえば、ある町の工務店では、初回工事から半年後に「不具合チェック」と称して無料訪問を行います。
内容は些細な点検ですが、実はこれがリピートの種まきになっている。結果的に、「次のリフォームもお願いしたい」と言われる確率が大幅に上がるのです。

このように、リピートされる会社には共通して「また会いたい」「また話したい」という感情を引き出す工夫があります。
それは、単なる“顧客満足”ではなく、“関係性満足”と言えるかもしれません。

中小企業が陥りがちな「リピート施策」の落とし穴

リピートを増やそうとして、ありがちなのが以下のような取り組みです:

  • 割引クーポンを配布する
  • ポイント制度を導入する
  • LINE公式アカウントで情報発信する

もちろん、これらは全て正しい手段です。ただし“順番”が間違っている場合が多いのです。

顧客が再訪する理由は、「お得だから」ではありません。
本質的には「気持ちよく買えたから、またこの人から買いたい」のです。

リピートとは、“割引”ではなく“記憶”に残ることから始まります。

「また買いたくなる会社」の3つの仕掛け

ここからは、中小企業の現場を支えてきた立場から、実際に効果があった「リピート率を上げる工夫」を3つ紹介します。

①「売らない」営業を習慣化する

「売らない営業」と聞くと、「売上が下がるのでは?」と不安になる方もいるかもしれません。しかし、現代の消費者は押し売りや一方的な情報提供には敏感です。「売られた」と感じた瞬間に、心理的に距離を取ってしまいます。

むしろ、「この人は私の話を聞いてくれている」「本当に自分の課題を理解しようとしてくれている」と感じた時、顧客は心を開きます。営業マンは“商品を売る人”ではなく、“相手の悩みに寄り添うパートナー”であるべきです。

たとえば、トップ営業の「勝ちパターン」をマニュアル化し、その中で「傾聴を重視した提案」こそが成果につながるとなった場合、あえて“売らない姿勢”を大切にすることで、相手の信頼を獲得し、「またお願いしたい」という気持ちを育てるのです。

②「聞くスキル」でファンを生む

リピート顧客を増やすために最も重要なスキルの一つが、「聞く力」です。特に中小企業では、顧客一人ひとりとの関係性がブランドの価値を左右します。単なるサービスの提供者ではなく、“話を聞いてくれる人”“自分のことを覚えてくれている人”という印象を持ってもらうことで、再訪の動機が自然と生まれるのです。

ここで大切なのが、「相手の感情に寄り添う聴き方」。ただ情報を収集するのではなく、相手の背景や価値観を理解しようとする姿勢が、信頼関係を構築します。

たとえば、リーダーやスタッフに「聞く姿勢」を育成する研修を導入。お客様の言葉の“奥”にある本音や課題を拾い上げ、対応に活かしています。この「聞く文化」が定着することで、顧客満足度が向上し、長期的な関係性に発展するケースが増加しました。

③「忘れさせない工夫」で存在感を保つ

どんなに素晴らしいサービスでも、「思い出されなければ」次はありません。顧客が再び訪れるためには、“記憶に残る仕組み”が必要です。では、具体的にどのような工夫があるのでしょうか?

まず重要なのが、「適切なタイミングでの接点づくり」です。たとえば、定期的なニュースレターやLINEメッセージで、役立つ情報や近況報告を届ける。あるいは、サービス利用後1ヶ月のタイミングでの「フォローメッセージ」や「感謝のお手紙」も、顧客にとっては強く印象に残る仕掛けです。

こうした顧客フォローを“業務フローの一部”として定着させています。トッププレイヤーの動きや感覚をマニュアル化し、誰でも同じように“顧客に想起されるアクション”を実施できるようにすることで、継続的な関係構築が可能になります。

また、定期的な「ニュース配信」や「イベント招待」など、顧客とのタッチポイントを増やすことも有効です。そうすることで、忘れられるどころか「いつも気にかけてくれている会社」としての印象を残すことができます。

忙しい社長でも、いますぐできるリピート強化策5選

最後に、今日から始められる具体策を5つまとめておきます。

リピート強化対策
  1. 顧客台帳に「前回話題になったこと」をメモしておく
  2. 納品後に「10日後フォローコール」を入れる
  3. 感謝状や記念品を渡す機会を設ける(1000円でも効果あり)
  4. 既存客だけの“限定情報”を発信する
  5. 社員と一緒に「また来てもらうには?」を月1回考える

難しいツールや広告戦略よりも、人間くさい工夫のほうがリピート率を高めるのです。

リピート率を“見える化”すると、社員の動きが変わる

もうひとつ、見落とされがちですが非常に効果的なのが、「リピート率を社内で共有すること」です。

ポイントは、「売上額」ではなく「また選んでもらえたかどうか」を価値基準にすること。数値としてリピート率を追いかけることで、社内の空気が“目先の売上”から“関係性の維持”へと変わります。
これが結果として、長期的な売上の安定に繋がっていくのです。

まとめ|「誰に売るか」を変えると、未来が変わる

新規顧客の開拓も大切ですが、「すでに買ってくれた人」をもっと深く知ること。
そこに、会社の未来を変えるヒントがあります。リピート設計まで含めて、現場で実践することが必要です。
売上の安定を本気で目指したい社長こそ、「誰に、なぜ、何をリピートしてもらうか?」を設計していきましょう。