経営を続ける上で、売上を伸ばすことと同じくらい重要なのが「経費削減」です。とはいえ、単なるコストカットは現場の士気を下げ、サービス品質を落とすリスクがあります。大切なのは、ムダを減らしつつ、必要な投資は守るバランス感覚です。

本記事では、経費削減の視点を網羅的に整理した「経費削減チェックリスト」をご紹介します。実際に現場で使えるよう、各項目の背景や見直しポイントも詳しく解説します。


なぜ経費削減は“リスト化”が効果的なのか?

経費削減が一時的な取り組みで終わってしまう最大の理由は、
「何を削るべきかの全体像が見えていない」ことです。

人は感覚的な判断だけで進めると、削ってはいけない部分まで削ってしまったり、逆に大きなムダを見落としたりします。
そこで有効なのが「チェックリスト化」です。


経費削減チェックリスト【固定費編】

固定費は毎月一定額が発生するため、削減効果が持続的です。一度見直せば長期的に利益体質を強化できます。

(1) 家賃・地代

  • 現在のオフィスや店舗面積は適正か?
  • 空きスペースや利用頻度の低い会議室はないか?
  • 契約更新時の家賃交渉は行っているか?
  • サテライトオフィスや在宅勤務で縮小可能か?

(2) 光熱費

  • 照明をLED化しているか?
  • 電力契約プランを最適化しているか?
  • 冷暖房の温度設定は適正か?
  • 使用していない時間帯の電源管理は徹底しているか?

(3) 通信費

  • 不要な固定電話回線やFAX回線が残っていないか?
  • 携帯電話や通信プランの一括見直しをしているか?
  • インターネット回線を一本化できないか?

(4) 保守・リース契約

  • 複合機やサーバーのリース契約内容は現状に合っているか?
  • 使っていない保守サービスを契約したままにしていないか?
  • 他社比較で料金が高すぎないか?

経費削減チェックリスト【変動費編】

変動費は売上や活動量に比例して増減します。
「削る」というよりも「効率化」や「単価の見直し」で効果が出ます。

(1) 広告宣伝費

  • 広告の費用対効果を測定しているか?
  • 成果の出ない媒体や枠を惰性で継続していないか?
  • 無料・低コストで効果的な広報手段(SNS、プレスリリース)を活用しているか?

(2) 交通・出張費

  • 出張はオンライン会議に置き換えられないか?
  • 出張時の宿泊・交通は法人契約や早割を利用しているか?
  • 移動経路の最適化をしているか?

(3) 仕入れ・原材料費

  • 仕入先との価格交渉は定期的に行っているか?
  • 発注ロットを最適化して在庫過多を防いでいるか?
  • 同品質で安価な代替品はないか?

(4) 外注・委託費

  • 外注先の作業内容にムダや重複はないか?
  • 内製化できる部分はないか?
  • 契約更新時に複数社見積もりを取っているか?

経費削減チェックリスト【人件費編】

人件費は単なる削減ではなく、生産性向上とセットで考えるべきです。

(1) 配置と業務量

  • 人員配置は業務量に見合っているか?
  • 業務の偏りが発生していないか?
  • 業務の自動化や外部ツールで効率化できないか?

(2) 残業時間

  • 残業時間が多い部署や時期はどこか?
  • 業務フローを見直して残業の原因を特定しているか?
  • 代休やシフト調整で負担を平準化しているか?

(3) 教育・研修コスト

  • 研修内容は現場の成果に直結しているか?
  • eラーニングなど低コスト手法を活用しているか?
  • 社内講師制度で外部講師費用を削減できないか?

経費削減チェックリスト【その他編】

(1) 備品・消耗品

  • 不要な在庫や使われていない備品はないか?
  • 購入ルールや承認フローは明確か?
  • まとめ買いによる単価削減は可能か?

(2) サブスクリプション

  • 使っていないツールやアプリの契約が残っていないか?
  • 同機能のサービスが重複していないか?
  • 年額契約への切り替えでコストダウンできないか?

(3) 保険・税務関連

  • 加入している保険は現在の事業規模に合っているか?
  • 不要な補償や重複契約はないか?
  • 税制優遇措置や補助金・助成金を活用しているか?

チェックリストを“機能させる”ための運用ポイント

経費削減チェックリストは作るだけでは意味がありません。
運用のコツは次の通りです。

  1. 定期的に見直す(最低でも四半期ごと)
  2. 部署ごとに担当を決める(責任の所在を明確化)
  3. 数値で効果を測定する(削減額・削減率を記録)
  4. 成果を共有する(全社で意識を高める)
  5. 削減分を成長投資に回す(士気低下を防ぐ)

まとめ

経費削減は「我慢大会」ではなく、企業の体質を強化する戦略的な取り組みです。
今回のチェックリストを活用すれば、ムダを可視化し、削るべきポイントと守るべきポイントを明確にできます。最初からすべてを完璧にやる必要はありません。まずは優先度の高い部分から着手し、削減効果を“仕組み化”して持続させることが、長期的な利益アップへの近道です。